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Tokyo Forum 2022 Theme 東京フォーラム 2022 テーマ

「哲学と科学の対話:戦争とパンデミックそして気候変動に直面する世界の中で」

昨年の東京フォーラムでは、科学の進展で生じた不安の緩和には対話が鍵になることを確認し、意見を交わした。 そして本年、戦争とパンデミックそして気候変動に直面するなか、わたしたちがより豊かに生きるためにはどうするかについて議論を交わす。100年前の歴史を繰り返すわけにはいかない。人間の生を支配するに至る生政治、個人の自由を抑圧し全体としての国家へ奉仕させる全体主義、そして世界戦争。これらに至ることのない、新しい社会的想像、すなわちあるべき社会の姿についての新しい社会的共通理解が、今、必要とされている。それは人間と国家の再定義を要求するものでもある。それには、哲学と科学が徹底的に対話を交わさなければならない。 まず哲学に関しては、戦争の哲学に陥ってしまった20世紀の哲学に代わって、21世紀の世界哲学は、地域性と多様性に基づいた上で、価値に関する相対主義の罠を避けつつ、新しい普遍を構築することに貢献する。それはどの価値も相対的であるとして普遍的な価値を認めないことで善の根拠を失うのではなく、普遍性のテストにかけることで、地域的で多様な価値を洗練し、開かれたものにすることである。それは、人間を中心とするような人間中心主義を無反省に普遍と考えてきた歴史を厳しく批判しつつ、生態系や自然などの人間以外の他者との共生に開かれた普遍であるはずだ。21世紀の科学もまた、質の高い批判的態度を必要とする。これを欠いた科学主義からの脱却、そして科学者が自らの限界を画定する努力が求められている。それは、科学にとって倫理とは何かをあらためて問い直すことでもある。ここでは世界哲学と科学の対話から、国家と人間に関して、21世紀に必要とされる社会的想像を提示していきたい。