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ユースセッションの報告

東京フォーラムでは、2022年以降、将来の主役となる若い世代の意見を取り入れた議論を行ってきました。今年は東京大学安田講堂で行われる東京フォーラムの公式セッションの一つとしてユースセッションが開催されました。ここでは、東京大学と韓国の大学から合計10人の学生が「社会的分断とデジタル革新の時代における人間性の再興」という東京フォーラム2023の全体テーマについて討論し、このトピックに対する若い世代の意見を発表しました。参加者(順不同)は以下の通りです。
 
・チェ・カンウ:ソウル大学校経済学部
・飯森栄治:東京大学工学部
・ジュ・ユジュン:淑明女子大学校化学生物工学科
・オ・スジ:延世大学校人文科学部(心理学)
・大道麻優子:東京大学教養学部前期課程
・ノ・ウンセム:梨花女子大学校国際学大学院
・島田栞子:東京大学法学部
・ソン・ヒョンホ:韓国科学技術院電算学科
・豊島駿介:東京大学教養学部後期課程
・米今咲喜:東京大学教養学部前期課程
 
ユースセッションは2023年9月13日にソウルでの対面ミーティングを皮切りにスタートしました。数回にわたるオンラインでの議論を経て、12月1日(金)13時から14時に安田講堂で最終発表が行われました。
 
本セッションは、数十年にわたって世界的に関心を集める重要な社会課題が、なぜ根強く残っているのかという切実な問いから始まりました。そして、「AI」、「環境正義の不在」、「出生率の低下」の3つのトピックを選び議論を行いました。
 
第一の「AI」のグループは、「なぜ若者がAIへの対応策を創る上で大きな発言権を持たないのか」と問題提起しました。AIの急速な進歩とその潜在的な悪用に対する懸念を検討し、AIとの仕事の奪い合い、虐待行為、不適切なコンテンツ、プライバシー侵害などにより、若者が弱い立場になっていることを強調しました。上の世代が中心となって創り上げた対策は一時的な解決に過ぎず、持続可能な解決策には欠けると指摘し、AIの課題への効果的な対応に若者の視点を取り入れる必要性を訴えました。
 
第二の「環境正義の不在」のグループは、地域間および世代間での環境負担の移転に注目しました。高所得国の持続可能性への取り組みが、低所得国での汚染や搾取を引き起こしていると批判しました。この構造における不公平に目を向け、低所得国にさらなる負担を強いるような、単純な解決策を避ける必要があると主張しました。さらに、上の世代が将来の世代に環境問題を押し付けていることを批判しました。未来を考慮しない技術が長期的な環境危機を引き起こす可能性を指摘し、表面的な対策ではなく、より責任ある長期的な視点への転換を求めました。
 
最後の「出生率の低下」のグループは、「少子化対策」の前提に疑問を呈しました。政策の最終目標が個人の福祉ではなく、集団や国家レベルにあると批判し、少子化問題を「誰もが子供を持つことを選択する権利を保障する問題」として再定義するべきだと主張しました。また、日本の婚姻制度が家族に関する個人の選択を制限している事例や、韓国の厳格な家族関係登録制度が父子家庭の子供の基本権を脅かしている事例を紹介し、現在の制度が個人の権利を保護できていないことを示しました。現行制度によって排除される人々の人権を無視することは、経済効率と政治権力を追求する動機によるものであり、そのような動機よりも人権を優先するシステムへの変革が必要だと指摘しました。
 
3つのトピックを総合すれば、問題の解決を妨げ、問題を再生産し、問題を持続させる個々の社会システムについての批評をしたことになりますこれらのシステムは、デジタル革新によって形成された新しい世界の中で構築されていると同時に、異なる国や世代等を分断する社会的分裂の上に構築されています。各グループは、現行のシステムが社会全体の利益になっていないことについて根本的な原因を見出しました。ユースセッションでは、社会システムの一部を微調整するだけでは問題は解決しないという結論に達し、若い世代と共に新たに枠組みを設計するよう、影響力と決定権を持つ上の世代に訴えました。